野村証券に入社し、その後、孫正義氏の招聘によってソフトバンクに入社、現在はSBIホールディングスのCEOの北尾吉孝氏の著書を読んでいます。
北尾氏は、
「陰と陽を相対させることでバランスがとれる」
と言います。
江戸時代の儒学者である北尾墨香の血をひき、おじい様やお父様の代から、その精神性の影響を強く受けているようです。
中国の古典や安岡正篤氏の著書から、自身の哲学を磨きながら、ビジネスと向き合ってこられています。
ご自身の経験の中から例えて、ネット証券が短期間で実現したことをこのように述べています。
「発現あるいは発展は、「陽の原理」です。そうすると片方では「陰の原理」が働いてきます。陰と陽のバランスがとれたところで統一調和が行われ、そこに永続性や安定性がもたらされるのです。
世の中の事象はすべからく陽と陰とが相まつことが必要です。
そういう意味では、今後はリアルとネットが融合するという方向性が出てくると思います。ですから私たちも、ネットだけでよしとするのではなく、リアルの部分にも進出して、より好ましい世界を作る方向に動くことになると思います。」
日本は古くから、政治や行政のしくみを中国に習い、陰陽五行の考え方が、実はあらゆるところに浸透しており、茶道でも陰陽五行が大切にされています。
安岡正篤氏はこう言っています。
「人間は、何事によらず新鮮でなければならない。新鮮であるためには、真理を学んで、真理に従って生活しなければならない。人間としての深い道を学ぶ。正しい歴史伝統に従った深い哲理、真理を学び、それに根差さなければ、葉や花のような植物と同じで、四季に従って常に魅力ある、生命のみずみずしさを維持してゆくことはできない。」
新鮮さを保ち、みずみずしい感性と肉体と精神を持っていなければ、よりよい人間関係も、よりよい仕事もできないことは、私たちは知っているはずです。
どんどん進化していく科学やテクノロジーだけを追いかける、陽の部分だけではなく、歴史や古典、新しいものに代わられていく古いものの、陰の部分への学びも忘れずにいることで、統一調和のバランスがとれた、永続性や安定性がもたらされる。
それは、政治も、教育も、ビジネスも、組織も、そして人間関係のような身近な世界でも、同じことが言えるのではないでしょうか。
私が子どもの頃は、驚くほどのスピードで、電気製品や工業製品、化学製品などが発展し、環境汚染やアレルギーなども問題になってきた時代でした。
今は、環境への配慮はふつうになりました。
一方、今ではインターネットやバーチャルな世界が、目覚ましく進んでいて、同時にそのことによる「陰の原理」が働いてきています。
身体のどこかで、身体の感覚や五感、時間のかかるもの、何もしない時間のようなものを欲しています。
そうしたバランス感覚を常に磨いておくことが、北尾氏のように、ビジネスにおいても挑戦や判断力の直観と運を引き寄せるのだと思います。
一方、茶道の世界も同じと言えるでしょう。
長い歴史の中で、時代に合わせて変化したり、新しい感覚を取り入れたりしてきたからこそ、永続してきています。
古い形式にとらわれることなく、茶道の本質的な部分が社会で役に立ち、生き続けるためには、新しい形で陰陽のバランスを取り、現代社会と長い歴史の茶道が調和することが必要です。
茶道も、ビジネスも、新鮮さを保ち、みずみずしくあるために。